外科医10年目からの海外臨床留学

グータラなのに志だけは高い小児外科医の海外臨床留学の記録です。主に気合いと乗りと運で今まで生きてきてます。臨床留学先としてのオーストラリアの紹介。英語の勉強法や影響を受けた本などの紹介もしていく予定です。好きな言葉は「大器晩成」。2児の父です。emailはtkghiramatsu@gmail.comです。

上司との信頼関係 - 日本とオーストラリアの違い

1ヶ月ほど前に、心臓外科の先生のブログに記事を書いたり、あとこのブログをFBにアップしたことで、多くの方に読んでいただくことができて、多くのfeedbackをもらいました。

 

で、気づいたら1ヶ月以上ブログ更新してなかったので、そろそろ書こうかなと。

 

今日は、シドニーでの臨床2年目も半分が過ぎて、最近感じたこと、特に上司との信頼関係について書いてみたいと思います。

 

 

上司との信頼関係 

 

去年に比べて、上司からの信頼が確実に増している気がする今日この頃です。

ま、まだまだなんですけどね。

 

こちらでは3ヶ月に1回、同じチームの上司3名から定期的にフィードバックをもらう機会があります。

 

先日そのフィードバックの際にちょいと褒められたので、調子に乗って久しぶりにブログ書いてます。

 

僕自身の実感と同様、上司たちも、僕が去年に比べてだいぶ仕事に慣れてきて、上司たちも安心して任せられるようになってきた。といった趣旨のことを言われ、「むふふ」な気分になったわけです。

 

 この1年半で僕自身の何が変わったのか

 

もちろん、こっちにきてからの臨床経験、病院自体への慣れ、英語の上達、など、様々な要素があるのですが、上司たちからみて、僕が以前より「信頼できる」ようになった要素で一番大きいのは、「思ったことを口にするようになった」ことだと思います。

 

ま、大きく言えば、英語も含めた「コミュニケーション能力の向上」ということにはなると思うのですが、「向上」「上達」というより、「変わった」むしろ「変えた」ことが大きいのだと思います。

 

「信頼できる」部下とは

  

上司として、部下の能力は自分の生活質に影響します。部下がある程度自立していて、手技や判断に関して任せられる範囲が大きければ、上司は安心して夜寝ることができるわけです。

 

でも、部下の「できる、できない」以上に大事なことは、部下の「何ができて何ができないか」「何をわかっていて何をわかっていないか」を上司が把握していることなのだと思います。

 

別の言い方をすれば、上司にとって、自分の部下が「わからないことや判断に困ることがあれば、自分で抱え込まずにちゃんと相談」してくれれば、安心なわけです。

 

「ほう・れん・そう」ていう言葉は日本にもあり、基本的には同じなのですが、

 

日本と違うなと感じたところは、「とにかく思ったことを口にして、上司と多くコミュニケーションを取るのが大事」ということです。

 

この視点から自分を振り返ると、この1年半でだいぶ、「信頼できる部下」になってきたのだと思います。

 

去年、特に仕事を始めたばかりの頃は、「日本での習慣+言葉の壁」により、あまり自分の意見を積極的に言わなかったり、上司から言われたことをただ「sure」と言ってやっていたことが多かったように思います。

 

今になってわかりますが、これって、上司からすると「こいつ何考えてるかわからないし、そもそもわかってるのかわかってないのかが全然わからん」ということで、ま、結局のところ信頼されるまでにはなかなか至ってなかったんだと思います。

 

そのことは去年の早い段階から部長のDr.Thomasからも繰り返し言われていて、「you are too polite, try to be rude, as Austlarian people are」(かしこまりすぎてるから、もっとオージーみたいにくだけた感じでやりなよ)といつも言われてました。

 

「polite」という、マイルドな言葉を使ってくれてましたが、要は、「お前何考えてるかわかんないからキミ悪いんだよ」って言われてたのと同じだと今は思ってます。

 

ま、そうは言っても、その場で質問(議論)するって結構ハードル高くて、反射的に黙ってしまう癖もあったし、質問しようにも、英語が理解できていないだけなのか、内容が医学的に理解できてないのか、あるいは内容に納得がいってないのか、それすらよくわかんないと、質問するタイミングを逃したりしてきたわけです。

 

ま、今でもまだまだ、なところも多いんですがね。

 

オーストラリア人にとっての「無礼」とは

 

要は、オーストラリア人、というかWestern culture にとって、僕らAsian cultureの、「本音と建前精神」は、むしろ「礼に反する」場合があるのです。

 

こっちの人たちは、とにかく思ったことは口に出します。相手がたとえ上司でも。

 

もちろん最低限の「本音と建前」や「言い方」はあるようですが、上司が指示したことに納得いかない場合はその場でバシバシ質問しまくります。

 

最初の頃は、小児外科経験のほとんどない、卒後3年目のレジデントから「なんでこれをしないといけないんだ」「もっとこうやっては何故ダメなんだ」などと問い詰められると、「なんだよこいつ、つべこべ言わずに言ったことやってくれよ」と思っていました。

 

でも、今は「聞いてくれてありがと」てなかんじです。そもそもこう言った疑問に答えて、教育してくのも上司の重要な役割です。しかも、後輩たちが正しくて、それに気づかせてくれることもあるのです。

 

上の立場としてResidentと仕事をしているとわかりますが、すんなり「わかった」といって、任せていたら後になって、全然わかってなくて期待していたことと全く違うことをやっていた、ということはたまにあります。そんな時、「わかんないならわかんないってその時言ってくれよ」って思いますが、去年の僕は上司からこういう風に思われることが多かったのだな、と気付かされます。

 

先日のフィードバックの際もある上司は、「思っていることがあるのに何も言わない方が無礼だから、色々思うことを言ってくれるようになって感謝してる」

と言ってました。 

 

よく考えると、医療現場においては「無礼」「無礼じゃない」というより、思ったことを言わない方が「危険」ですよね、、。

 

なので、今はバシバシ自分の意見を言ってくるレジデントを「無礼」だとは思いません。

 

そんなこともあり、僕自身も意識的に「上司にバシバシ質問する」ようにしています。

 あと、聞かれてもいないのに日本で経験した症例について話したりとか。

 

そういった「日々のコミュニケーションの積み重ね」が、「上司からの信頼」に結びついていくのだなと、感じている今日この頃です。

 

最強のレジデントたち

 

ま、バシバシのレジデントもいる中で、ここオーストラリアならではの「最強の部下」たちもたくさんいます。

 

これは完全に僕の個人的な目線からの「最強」なのですが、それは

「アジア人の本音と建前を理解した上でWesternのバシバシコミュニケーションも行う」ことのできる奴らです。

 

 

オーストラリアならでは、と思うのですが、周りを見渡すと、アジア系のルーツを持つオーストラリア人(オーストラリアで生まれ育った人たち)が本当にたくさんいます。

 

彼らの多くは、両親の世代でオーストラリアに移住してきているので、家の中ではアジア文化で過ごしていたりします。なので、中には僕が感じているような文化の違いによるジレンマを理解してくれる奴らもいるのです。

 

 例えば、今卒後3年目のEdyは、大学時代にオーストラリアに渡ってきた香港出身の父と、ベトナムから難民として12歳の頃にオーストラリアに家族で渡ってきた母を持ち、彼自身はもちろんオーストラリアで生まれ育った「オーストラリア人」です。

 

 彼は、家の中は非常にアジアンな価値観、といってました。

 

まとめ

 

そんなわけで、今日も最後はダラダラになってしまいましたが、これからも患者さんやその家族にとって信頼できる「外科医」であると同時に「信頼できる部下」そして「信頼できる上司」として日々精進していこうと思いまーっす。

 

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Choldren's Hospital at Westmeadのメインエントランス。正式名称はRoyal Alexandra Hospital for Children。 らしい。