オーストラリアで臨床医として働き始めて2年半が経ちました。今年度はPaediatric surgical oncology fellowとして、今まで通りの小児一般外科疾患に加えて小児固形腫瘍の手術を中心に臨床を行なっています。日本ではなかなか経験できないよいうな小児腫瘍の症例が毎週のように経験できて、いい感じに日々過ごしております。
コミュニケーションに関しては、流石に日々の診療に直接関連する部分ではほぼ支障ありませんが、いまだにネイティブ同士の世間話についていくのはハードです。まあ、前よりはだいぶ参加できるようになってきたかなと思う今日この頃ですけど。それと、患者さんや、その家族(両親)とも、世間話をして打ち解けたり、と言った感じで診療をスムーズに進めていくこともだんだん増えてきたかな、と、感じてます。
白衣を着ないオーストラリア人
そういえば、最近はもっぱら当たり前になりましたが、オーストラリアの病院では医師は白衣を着ません。男性だと、シャツにチノパンか、たまにジーンズにポロシャツ、というスタイルでも意外とOKです。女性は基本「普通の私服」で感じです。
今回も完全に個人的な感想ですが、このオーストラリアの「白衣なし」スタイル、嫌いじゃないです。むしろ、良好な医師患者関係を築く上で、僕はこれはプラスに働いているのでは、と思っています。
実際の回診はこんな感じです。
「呼び方」と「コスチューム」が医師患者関係い及ぼす影響
医師の服装とともにオーストラリアでの診療スタイルで日本との大きく違うのは、
医師と患者(その家族)同士がファーストネームで呼び合っているということです。
いつも通り、なんのエビデンスもありません。単なる個人的経験に基づいた意見です。
オーストラリアで医師として働いていて強く感じるのは、医師と患者(もしくは患者の家族)との関係が完全に対等である(ことが多い)ということです。僕はこれは非常に良いことだと思います。
「白い巨塔」の時代のような、「お医者様」でもなければ、必要以上に患者さんに迎合した「患者様」でもない、対等な関係です。
特に小児医療では、この対等な関係「partnership」がとても重要なんじゃないかと思います。
というのも、病気の子供たちを見るとき、医者は「医療のスペシャリスト」としてそのケアに関わりますが、このプロセスは、「その患者さんのスペシャリスト」である両親との共同作業なのです。
特に自分で自分の体調を表現するのが難しい小児では、母親の「なんかいつもと違う」といった感覚的なものが診療の過程で重要なポイントになるとは珍しくありません。
もちろん僕らは医者として、その子がどれくらい具合が悪いのか(入院が必要かどうか)判断するために患者さんをなるべく客観的に評価するわけですが、同時に、親の直感が、時に子供の命を救うことは珍しくありません。
僕は日本にいた時以上に、オーストラリアでは患者さん(の親)との距離を近く感じます。それはすごくいいことだと思います。
このような対等な関係になりやすい背景として、まずは敬語があまりない英語と言う言語の特性があると思います。
それに加えて、表題にも書いたように、僕ら医師が普段白衣を着ていないから、というのも大きな理由ではないかな、と日々感じます。
なんか白衣を着ると、シャキッとするし、「自分、医者です」みたいな、自覚をより持つ、という意味で、日本にいるときはそれはそれでメリットも感じてました。
が、オーストラリアで白衣なしの診療スタイルに慣れてくると、これはこれで良いな、と感じてくるわけです。
で、特に医師患者関係の構築において、これが僕には良い感じだな、と思ってます。
というわけで、根拠はないですが、白衣を着ないで、ファーストネームで呼び合うオーストラリアスタイルの紹介でした。